建築の還元 更地から考えるために

建築の還元 更地から考えるために

実際、われわれは現実的な建築の精度を高めることでその誤差を限りなく小さくし、ゼロへと漸近させることはできるが、それをゼロに合致させることは絶対にできない。だからこそ建築は、知覚以前の寸法に「逃げ」を介在させ、それを問わないことによって正確さの問題をある地点で切り落とすのである。ヴィトゲンシュタインの言葉にならって言えば、「測り得ないものについては、沈黙しなければならない」のだ。しかし、ヴィトゲンシュタインはここで、その「測り得ないもの」こそを問題化している。それは正確さの表象という観点からすれば無意味であるような場所、すなわち表象の外部に、表現の意識を集中させているのである。(p55)