聖書男(バイブルマン)  現代NYで 「聖書の教え」を忠実に守ってみた1年間日記

聖書男(バイブルマン) 現代NYで 「聖書の教え」を忠実に守ってみた1年間日記

ラビ・アンディ・バックマンとも朝食をとった。才気に富み、ブルックリンで最大級のシナゴーグのひとつ、コングリゲーション・ベス・エロヒムの長を務める彼は、あるミドラシュについて話してくれた。ミドラシュというのは、聖書そのものには記されていないが、聖書の中の事件を扱った物語もしくは伝承で、彼が取り上げたのは紅海割りに関するものだった。
「紅海割りというと、みんな『十戒』を思い浮かべる。チャールトン・ヘストン扮するモーセが杖を上げて、水が引いたあのシーンを。ところがミドラシュによると、事情が少し違う。モーセが杖を上げても海は分かれなかった。エジプト軍は迫ってくるし、海は動かない。そのとき、ナフションという名のヘブライ人が海に入っていった。ナフションは足首まで水につかって歩いた。それがひざなり腰になり、肩になった。水が鼻の穴にまで達したとき、ようやく水が分かれた。つまり、飛び込んでいった初めて奇跡が起こるんだ。それも、ごくたまに」
そういうわけで、ぼくは飛び込んだ。その後の顛末を以下に記そう。(p42-43)