ヴェーバーがこのエートスについて重要なことを述べています。エートスはどんな社会にもあるが、滅多なことでは変化しない。ただしこれは歴史的なものなので、条件次第では変化することもある。そういった変化がただ一度、宗教改革によって、カンヴァン派の人々の間で起こった。そして、このエートスの変化が、それまで不可能であった近代資本主義社会を成立させる。決定的な契機だったとのべているのです。
 人類学では、構造は変化しないことになっているわけですから、かつてパーソンズが批判されたみたいに、静的な議論と言われかねないでしょう。しかし、ヴェーバーのように構造を解釈するならば歴史的な必要があれば構造変動が起こるという論理を汲み取ることができるわけで、ここから小室さんは構造‐機能分析を組み直す上で、非常に深い洞察を得たと思います。構造が変化し得るという重要なアイデアの具体例をここから学んだのではないか。(p159)